札幌市では、家庭や事業所から出る使用済み蛍光管を「資源」として再利用する取り組みを推進しています。蛍光管に含まれる水銀の適正処理とガラス資源の有効活用を目的としたこの制度について、具体的な回収方法から意外な再利用事例まで詳しく解説します。

蛍光管リサイクルの重要性

蛍光管1本には約5mgの水銀が封入されており、適切に処理しないと環境汚染の原因になります。札幌市ではこの水銀を99.9%回収し、新しい蛍光管の原料として再利用しています。回収されたガラスは断熱材(グラスウール)に生まれ変わり、住宅の省エネルギー化に貢献しています。

専門用語解説:グラスウールとは、溶かしたガラスを繊維状に加工した断熱材。熱伝導率が低く、住宅の壁材や天井裏に広く使用されています。

回収対象となる蛍光管の種類

3種類の蛍光管が回収対象となりますが、それぞれ特徴が異なります:

  1. 環型:円形の蛍光灯。主にリビングや店舗の装飾照明に使用
  2. 直管型:長さ120cmまでの棒状蛍光灯(40W・40形)。事務所や工場で多用
  3. 電球型:口金がE26/E17の省エネ電球。一般家庭の天井照明に普及

回収方法の詳細

基本ルート

市内の電器店・スーパー・ホームセンターなど約200か所の協力店で回収。特に目印となる「のぼり旗」と「ステッカー」が掲示された店舗で受付しています。

主な協力店例

  • ヤマダ電機テックランド(各区に展開)
  • ビックカメラ札幌店(中央区)
  • イオン系列店舗(麻生店・平岡店など)
  • DCMホーマック(各主要地区)

代替手段

  • 小型家電回収ボックス:公共施設に設置された青い回収ボックスを利用
  • 指定ごみ袋:直径30cm以内のものは「燃やせないごみ」として排出可能
  • 大型ごみ:長さ120cm超の直管型は有料で申し込み

回収時の注意点

  1. 破損防止:新聞紙で包み「キケン」と表示。割れた場合はビニール袋で密閉
  2. 分別厳守:LED電球は対象外(「燃やせないごみ」へ)
  3. 事業所排出:店舗やオフィスからは1日10本まで(超える場合は産業廃棄物)
  4. 時間厳守:協力店の営業時間内に持込(多くの店舗は10:00~18:00)

豆知識:戦後間もない頃、蛍光管の水銀は体温計の材料として再利用されていました。現在ではデジタル温度計の普及で需要が激減し、リサイクル技術が進化しています。

リサイクル工程の仕組み

回収された蛍光管は次の7段階で再生処理されます:

  1. 破砕機でガラス片と金属部品に分解
  2. ふるい分けでプラスチック部品を除去
  3. 水銀含有部分を真空加熱(300℃)で分離
  4. 水銀蒸気を冷却管で液化回収
  5. ガラス片を色別(透明・茶・その他)に選別
  6. 金属部材(アルミキャップなど)を溶解
  7. 再生原料をメーカーへ供給

環境効果の数値化

札幌市の年間回収量約50万本(2024年度)から得られる効果:

  • 水銀回収量:2.5kg(体温計5万本分)
  • CO2削減:375トン(杉の木2.7万本分の年間吸収量)
  • エネルギー節約:原油換算で1.2万リットル

意外な再利用事例

  • 水銀:歯科用アマルガム・計測機器・ワクチン保存剤
  • ガラス粉末:道路標示塗料・陶磁器釉薬・研磨材
  • アルミ部品:自転車フレーム・建材金具

区別主要回収拠点

中央区

施設名住所特徴
ビックカメラ札幌店北4条西2丁目地下街直結・駅近
DCM桑園店北10条西16丁目駐車場完備

南区

施設名住所特徴
ヤマダ電機南川沿店川沿5条2丁目大型トラック対応

歴史的雑学

1950年代の札幌では、蛍光管のリサイクル率が30%以下でした。1972年冬季五輪を機に環境意識が高まり、現在の回収システムの基礎が作られました。当時は職人が手作業で水銀回収を行い、1日100本処理するのが限界でした。

よくある質問

Q. 割れた蛍光管の緊急対応は?
A. 窓を開け換気後、厚手の手袋で破片を回収。密閉容器に入れ「燃やせないごみ」へ。

Q. 古い蛍光管でも回収可能?
A. 昭和期の蛍光灯も可。ただし黒ずんだものはガラスのみ再生可能。

Q. 引越し時の大量処分方法は?
A. 環境局へ事前連絡(011-211-2879)。移動式回収ボックスの設置が可能。


札幌市の蛍光管リサイクルは、都市鉱山開発と環境保護を両立するモデルケースです。200か所以上の回収拠点を活用し、ぜひ持続可能な社会づくりに参加しましょう。小さな1本の選択が、未来の環境を守る大きな一歩になります。

回収拠点検索札幌市蛍光管回収マップ
問い合わせ:環境局廃棄物処理部 011-211-2879