札幌市が2024年10月から画期的なリサイクル事業を開始します。家庭から出るペットボトルを再びペットボトルに再生する「ボトルtoボトル(Bottle to Bottle)」の試行事業がスタート。この取り組みが目指す「完全循環型社会」の可能性を徹底解説します。
プロジェクトの核心:従来との違い
従来、札幌市で回収されたペットボトル(年間約8,500トン)は、国の指定法人を通じて繊維製品やプラスチック成型材にリサイクルされてきました。しかし今回の試行では、2つの革新が加わります:
- リサイクル経路の選択権:自治体が直接事業者を選定
- マテリアルリサイクル:元の製品と同じ用途で再利用
専門用語解説
マテリアルリサイクル:廃棄物を原料に戻し、同等品質の製品に再生する手法。従来の「ケミカルリサイクル」(化学分解)より環境負荷が低いとされます。
実施概要とスケジュール
項目 | 内容 |
---|---|
期間 | 2024年10月~2025年9月(1年間) |
対象量 | 1,000トン(全市回収量の約12%) |
選定事業者 | 2社(各社250トン/期) |
監視指標 | CO2排出量・エネルギー消費量・コスト効率 |
期待される3つの効果
1. 環境負荷削減
従来のダウンサイクル(品質低下した再利用)に比べ、製造エネルギーを最大50%削減。原料調達から輸送までを含むライフサイクル全体でのCO2削減を測定します。
2. 市民意識の改革
「自分の出したペットボトルが再び製品に」という可視化で、リサイクル行動の定着を促進。アンケート調査では78%の市民が「参加意欲あり」と回答しています。
3. 経済的持続性
市の試算では、本格導入で年間1.2億円の処理コスト削減を見込んでいます。ただし品質維持に必要な洗浄工程のコスト増とのバランスが課題です。
市民が知るべき3つの事実
- キャップとラベルは必ず外す:異物混入防止のため
- 潰さずに出す:自動選別機の精度向上に貢献
- 色別回収の重要性:透明→透明、色付き→色付きの再生が可能
驚きのリサイクル技術
選定された事業者が採用する「スーパークリーン工法」は、食品残渣を99.9999%除去する世界最高水準の洗浄技術です。この工程を経て、再生ペットボトルは新品と同等の衛生基準をクリアします。
雑学:日本のペットボトルリサイクル率は85%で世界トップクラス。しかし「ボトルtoボトル」比率はわずか12%で、欧州(平均35%)に遅れを取っていました。
今後の展望と課題
2025年度末に実施する効果検証では、以下の指標を重点評価:
- 再生コスト対効果(1kgあたりの処理単価)
- 再生樹脂の引張強度(新品比90%以上が目標)
- 消費電力(kWh/トン)
課題として、色付きペットボトルの再生難易度が挙げられます。茶色ボトルの再生では着色剤の完全除去が技術的に困難で、現段階では透明ボトルが主流となります。
市民へのメッセージ
このプロジェクト成功の鍵は、「分別の質」にあります。ある実験では、キャップを外さないと再生効率が40%低下することが判明しています。次の3つを実践しましょう:
- 中を軽くすすぐ
- キャップとラベルを分別
- 指定収集日に確実に出す
札幌市の挑戦は、SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」の具現化です。1本のペットボトルが再び命を吹き返す循環の輪に、私たちも参加してみませんか?
問い合わせ先
札幌市環境局資源循環課
011-211-2879(平日8:45~17:15)
関連情報
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