札幌市が「飛んでけ!車いす」の会と連携協定を締結し、使用済み車いすの再利用促進に取り組んでいます。この画期的なプロジェクトの仕組みと環境への影響、市民参加の方法を詳しく解説します。
プロジェクトの背景と目的
札幌市では年間500台(令和5年度実績)の車いすが大型ごみとして廃棄されています。この現状を改善するため、リデュース(発生抑制)とリユース(再使用)に焦点を当てた「2R戦略」の一環として本プロジェクトが始動しました。
専門用語解説
2R:Reduce(削減)とReuse(再利用)を指す環境用語。リサイクル(Recycle)を含めた「3R」より優先度が高いとされています。
協定の仕組みと特徴
連携団体:「飛んでけ!車いす」の会
- 活動内容:
- 不要車いすの無償回収
- 専門技術者による点検・修理(部品交換/塗装補修)
- 国内外の必要な人へ無償提供
- 実績:
修理成功率78%、提供先は介護施設・発展途上国など多岐にわたります。
自治体の役割
- 公式HPでの情報発信
- 回収拠点の拡充(2025年3月現在12か所)
- 市民への啓発活動(年4回のリユースフェア開催)
環境効果と社会影響
数値で見るメリット
指標 | 1台あたり効果 | 年間500台効果 |
---|---|---|
CO2削減 | 120kg | 60t(杉の木4,300本分) |
金属資源節約 | 18kg | 9t(自動車45台分) |
処理費用削減 | 2,500円 | 125万円 |
驚きの事実:車いす1台の製造には約200kWhの電力が必要で、これは一般家庭の月間使用量に相当します。
参加方法と注意点
回収までの5ステップ
- 状態確認:破損状況をチェック(全損品でも部品流用可能)
- 申し込み:公式HPのQRコードからアクセス
- 回収日調整:スタッフが自宅訪問(搬送費用無料)
- 修理工程:平均3週間かけて再生
- 再出荷:新しい使用者へ引き渡し
重要なルール
- 対象外品:電動車いすは電池除去が必要
- 付属品:クッション・レインカバーは同梱可
- 個人情報:名前シール等は必ず除去
歴史から学ぶリユースの知恵
江戸時代の札幌では、障害者用の「木製移動椅子」が世代を超えて受け継がれていました。大正時代に金属製車いすが普及後も、戦時中の金属不足でリユース文化が発展。現在の取り組みは、この伝統的知恵の現代的継承と言えます。
よくある質問
Q. 海外への寄付はどのように?
A. モンゴル・ベトナム等へ年2回コンテナ輸送。現地NGOが分配を管理します。
Q. 譲渡先を指定できる?
A. 可能です。特別養護老人ホームや障害者施設を希望できます。
Q. 修理不能品の行方は?
A. アルミ枠は建材へ、タイヤは園芸用プランターに再生されます。
市民ができる3つの貢献
- 情報拡散:SNSで#札幌車いすリユースを共有
- ボランティア:清掃・簡易修理作業に参加
- 寄付:1口1,000円から支援可能(修理部品代に充てられます)
札幌市の車いすリユースプロジェクトは、環境保護と社会福祉を同時に実現する先進的な取り組みです。家庭に眠る車いすが、海を越えて誰かの自立を支える。そんな希望の連鎖を、私たちの手で広げていきましょう。
問い合わせ先
札幌市環境局資源循環課:011-211-2879
関連リンク
活動実績レポート
不要になった車いすが、新たな命を吹き込まれる瞬間。あなたの協力が、世界を動かす一歩になります。