札幌市では、家庭で不要になった布製品を「資源」として再利用する取り組みを推進しています。特に綿50%以上の薄手の布類は、工業用ウエス(ぞうきん)として新たな役割を与えられています。この記事では、リサイクルの仕組みから環境への影響まで、詳しく解説します。
古布リサイクルの意義と目的
日常生活で使わなくなったシーツやタオル、シャツなどの布製品は、従来「燃やせるごみ」として処分されていました。しかし札幌市では、これらの布類を「ウエス」と呼ばれる工業用清掃資材として再生することで、ごみの減量化と資源の有効活用を実現しています。この取り組みは、繊維産業における循環型社会の構築を目指すものです。
専門用語解説:ウエスとは、機械油の拭き取りや精密機器の清掃に使用される再生布製品。自動車整備工場や製造工場で広く利用され、1枚のTシャツから約10枚のウエスが作られます。
回収対象となる布製品の条件
リサイクル可能な布類は、以下の条件をすべて満たす必要があります:
- 素材:綿50%以上を含む薄手の生地
- 形状:シーツ・タオル・シャツ・ブラウスなど平面状に広げられるもの
- 状態:洗濯済みで破損が目立たないもの
- 付属品:ボタンやファスナーは付いたままでも可
具体例
- 回収可能:綿100%のシーツ、綿混ポロシャツ、薄手のカーテン
- 対象外:ダウンジャケット、ジーンズ、毛布、靴下
3つの回収方法と特徴
札幌市では、市民の利便性を考慮した複数の回収ルートを整備しています。それぞれの特徴を比較してみましょう。
1. 集団資源回収(地域コミュニティ型)
町内会やPTAが主体となり、地域単位で実施する回収方法。月1回程度の頻度で、自宅近くの集会所などが回収場所となります。事前に集団資源回収ページで実施有無を確認する必要があります。
2. 地区リサイクルセンター(常設拠点型)
市内9区に設置された常設施設。例えば中央区の「ちえりあ」には専用回収ボックスが設置されており、平日8:30~16:30の間で随時受付しています。大型トラックでの搬入も可能です。
3. 古着回収併用(リユース優先型)
衣類として再利用可能な製品は、別途「古着の無料回収」を利用できます。コートやワンピースなど季節物は特に需要が高く、市内の福祉施設や開発途上国へ寄付されます。
回収時の重要ポイント
- 洗浄義務:食品汚れや臭いが残っているものは受け付け不可
- 梱包方法:透明・半透明袋に入れ「布類」と表示
- 仕分け基準:
- シーツ:1枚ずつ折り畳む
- タオル:10枚程度を輪ゴムで束ねる
- シャツ:ボタンを留めて平らに重ねる
- 注意事項:
- 合成繊維(ポリエステル等)が多いものは不可
- スプレー汚れ(整髪料・香水)のあるものは除去が必要
環境効果と社会貢献
2024年度の実績では、約150トンの布類が回収されました。これは以下の環境効果に相当します:
- CO2削減量:225トン(杉の木16,000本の年間吸収量)
- 節水量:750万リットル(25mプール12杯分)
- ごみ処理費削減:約600万円
歴史的豆知識:江戸時代の北海道では、使い古した布を「ぼろきれ」として建築資材に活用していました。断熱材として壁に埋め込むことで、厳冬期の寒さをしのいでいたのです。
驚きのリサイクル事例
回収された布類は、工業用ウエス以外にも様々な形で再生されています:
- 自動車分野:デニム生地→カーシートの断熱材
- 建築資材:綿シーツ→防音パネルの充填材
- 農業用資材:タオル→育苗用マット
- アート材料:色付き布→公共施設の装飾オブジェ
よくある質問
Q. 穴の開いたTシャツでも回収可能?
A. 直径5cm以下の破損なら可。ただし糸くずが発生する場合は「燃やせるごみ」へ。
Q. 子供の制服は?
A. 綿50%以上なら可。ただし校章付きは「古着回収」が適しています。
Q. 大量に処分したい場合は?
A. 環境局廃棄物処理部(011-211-2879)へ事前連絡。移動式回収ボックスの手配が可能です。
持続可能な選択を
札幌市の古布リサイクルは、家庭の不用品が社会の役に立つ好例です。1枚のタオルが工場の清掃資材となり、やがてまた新しい製品の原料となります。この循環の輪に参加することで、私たちは未来の環境を守る一歩を踏み出せるのです。
関連情報
集団資源回収スケジュール
小さな行動が大きな変化を生みます。引き出しの奥に眠る布製品を、ぜひ資源としての新たな旅へ送り出してみてください。